今日電車でハンカチを落とした。
前の席の女性が拾って渡してくれた。
栗色の髪した、落ち着いた雰囲気の若い女性だった。
彼女は知らない人間に話しかける緊張からか、俯きがちに落としましたよ。と私に言った。
にこりともしない彼女。私はただありがとうございますと返した。
同時に私はその女性の勇気と優しさにも感謝した。
そして優しさは暖かいものだと言うことを思い出した。
心と顔が少し暖かくなる。
しかしこの暑いのに暖かくなるのは少し困るな。と眉の汗を拭う。
脳裏には栗色の髪が焼き付いていた。
今日は1日暑そうだ。
そう考えながら私は改札を出たのだった。
ハンカチを拾ってくれた女性はもうどこにも見あたらない。